土曜日のはなし。
奥さんは仕事で早番とのことで、7時前に出て行った。ぼくは午後に美容室の予定を入れているが、それ以外に予定の無い休日。平日が精神的にハードな日々が続いていたため、ゆっくり寝ようかと思ったが8時過ぎにはすっかり目が覚めてしまう。
予定がなく、疲れているのなら家でのんびりしていれば良いのかもしれないが、どうにも家でのんびりするというのが苦手だ。13時半からの散髪の予約なので9時半に出ればトレーニングして昼飯食ってコーヒーでも飲めるなとか考えてしまう。常に何かをしてないと落ち着かないのかもしれない。それとも何か外出欲のようなものがあるのかもしれない。ぼくはあるのかもしれない外出欲を満たすため、サンダル履きでペタペタと出かけた。
朝飯を食べていなかったのでコンビニで買ったプロテイン飲料を飲みながらトレーニング。はたして健康なのか不健康なのか。
思ったよりも早く終わったので、まだ空いている11時台のファミレスへ。せっかくトレーニングしたのでタンパク質を食いたい。ハンバーグとヒレカツに焼肉という頭の悪そうな肉プレートとビールを注文する。ライスは無し。欲望に忠実な自由な昼飯である。
ファミレスはこの自由さが良い。隣に座った二人組のご老人は、一人はネギ塩タン麺、一人はインドカレーとナンのセットとかなり自由な注文。ご老人が向かい合ってそれぞれタン麺とインドカレーを食っている姿はなかなか変である。普通のレストランではこんなことは出来ない。というかよくそんなメニューあったな。
食べ終えて軽く読書して散髪へ。散髪という言葉は素敵だ。ヘアカットではなく散髪。なんとなく小粋で清潔感のある言葉ではないか。男は黙って散髪なのである。まぁ行くのは理容ではなく美容室なのだが。
今回、初めて着いてくれた美容師さんだったのだが、頭の形や毛流れから的確にアドバイスをしてくれてなかなか良かった。そして仕事に入ったら必要以上に話しかけてこないのも良い。ぼくは営業あがりのくせに雑談が好きではないのだ。
この美容室のスタッフは皆さん距離感が素晴らしい。はじめに簡単に希望する髪型について質問されるが、ぼくが雑誌に目を落としたら静かにしてくれる。そして仕事も素早く丁寧である。無駄に話さず仕事に集中して無駄がない。これまでの美容師さん達の様子から察するに、ぼくがどんな客で前回どのくらいカットしたのかもデータとして共有されているのだろう。取り組みも姿勢も素晴らしい。ぼくも仕事人としてこうありたいものだ。
散髪後は近場をうろうろして少し残っていた外出欲を十分に満たしてから帰宅する。帰りにスーパーで夕飯の食材を調達。
さて夕飯の支度である。
まずはシューマイと中華風の野菜炒め。
シューマイはスーパーに並んでいるシューマイの皮のパッケージに書いてある材料でほぼそのまま作ったのだが、味付けが醤油、お酒、砂糖、ごま油、塩のみで完璧なシューマイの味になるのが驚く。例えば餃子であれば挽肉にごま油とニラ、ニンニクあたりがキーとなって餃子味になるというのは理解できる。しかし、挽肉とタマネギに上記の味付けでは和風ハンバーグが出来てもおかしくない。ニンニクも鶏がらスープも中華だしも紹興酒も甜麺醤も入れてないのに完璧にシューマイの味と香りになるのだ。もちろん皮もただの市販の皮である。
作っている時も特にシューマイらしい匂いはしない。しかし蒸して食ったら笑えるくらいに完璧なシューマイの味と香りなのだ。シューマイをシューマイたらしめているのはなんなのか。蒸している間に何か化学変化が起きて小麦粉の皮で包んだ和風ハンバーグがシューマイにメタモルフォーゼするのか。謎である。
中華風の野菜炒めは豚バラ、長ネギ、ナス、ピーマン、シメジをごま油で炒めて創味シャンタンで味付けしたもの。美味い。
鶏ハムを塩味、醤油味で二本作っておき、塩味の方をよだれ鶏にする。タレは醤油、お酢、豆板醤に花椒をミルでガリガリと挽いてかけたもの。ビールが進む味。
あとはネギトロとしめ鯖。何故かこれだけ和食。ネギトロが余ってたのでそれと一緒に食いたくなりスーパーで買ってきた。
平日の弁当用に多めに作ってみた。鶏ハム、シューマイ、野菜炒めは弁当のおかずとしても優秀なのだ。
まずはビールを飲み、その後日本酒に切り替える。四国の日本酒美丈夫。
外出欲と料理欲と食欲、飲酒欲まで満たした休日であった。
