土曜日のはなし。
年が明けてからずっと仕事が忙しく、バタバタした状態が続いていた。
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そこで、奥さんに子供をお願いして、一人で頭を空っぽにする時間を作ろうと鎌倉に来てみた。
土曜日の朝一番の鎌倉は比較的空いている。 とりあえずコーヒーを飲もうと、いつも行っている鎌倉市役所横のスターバックスへ。チェーン店の肩肘張らない感じが良い。鎌倉という場所がらの品のよさと、駅から近いのに観光客の歩くルートから反対側なのでそこそこ静かなのが良い。
店外のプールに差し込む日差しを眺めながらしばしノートを開く。明日から天気が大幅に崩れるらしいが、今日の午後までは曇ったり晴れたりといった天気みたいだ。
11時くらいまでのんびりと休憩。
そこから由比ガ浜までぶらぶら散歩する。勝手知ったる鎌倉の路地。前回の記事で紹介した若宮陶器をひやかしたりしつつ歩く
細くてレトロな建物。古い銀行の出張所だったらしい。その建物を利用して「THE BANK」というバーが営まれているらしい。
その裏手にある古道具屋。ひやかしおことわりと書いてあったので中は見ていないが、この針金でできたトルソーは面白いなと思って写真を取る。
由比ガ浜に到着。
冬の海は人もまばら。風もほとんどなく穏やかな海なのでサーファーの姿も少ない。音楽を聴きながら砂浜を散歩する。顔にあたる日光が気持ちよい。
11月にヨットがシーズンオフに入り、それからほどなくして娘が生まれたので、2ヶ月ほど海から遠ざかってしまっていた。高校生は本当に休みなしに毎日ヨットハーバーに通っており、社会人になってからも毎月海に出ていたので、こんなに海から離れていたのは久しぶりかもしれない。
ぽつりぽつりといる人たちもなんとなく皆楽しそうである。防波堤にもたれて、犬と一緒に日光浴をする初老の夫婦。レジャーシートを広げて双子の赤ん坊を遊ばせている若いお母さん。写真を撮り合っているアジア系の男女。貝殻を拾いながら歩いている小さな女の子とその親御さん。
このシーズンにわざわざ来ている人たちは本当に海が好きなのだろう、皆静かに冬の晴れ間を満喫している様子。
カモメの群れが波打ち際で休憩していた。
1時間ほどのんびりと散歩と日光浴を楽しんで海をあとにする。すっかりリラックスできた。僕の人生には海と日光と露天風呂とサウナと一人の時間が不可欠である。
散歩していて腹が減ったので若宮大路のクアアイナに入る。オンシーズンは行列ができるこの店も、冬だと待たずに入れて良い。ハンバーガーとビールを注文。
生ビールの(中)を頼んだら、思いのほかちゃんとしたジョッキできて驚く。
ハンバーガーのセットが1200円くらい。価格はマクドナルドの2倍だが、満足度は3倍くらいあるので個人的には大勝利である。肉を食ってる!と感じられるハンバーガーで、バーガーチェーンだと一番好きだ。しっかり味のついた細めのポテトもビールと合って良い。
平日のハードな仕事も、夜中まで子供をあやしていた寝不足も、海と日光とハンバーガーとビールで雲散霧消である。背中に羽根が生えたようだ。軽い足取りで帰宅する。
さて、自分だけ楽しんでも申し訳ないので、奥さんのためにうまいばんめしを作ろう。駅ビルにある魚屋で珍しい魚が売っていたので購入してみた。
でろん。なんとも珍妙な見た目の魚。黒くてブヨブヨ。
パックから出してみるとこんな感じ。どことなくオットセイのような表面の模様に、触ったらプルプルぬるぬるしており何とも不気味。おたまじゃくしのオバケのような、海に帰ったオオサンショウウオのようなそんな感じ。
顔はどことなくユーモラス。重力にまけて斜めに伸びている。底引き網にかかった己の無念さを感じさせない表情である。
これはホテイウオという魚らしい。北海道の函館あたりでは「ごっこ」と呼ばれて、冬場に鍋物にしたりするそうだ。ダンゴウオの一種で、お腹にある吸盤で海底の岩などに吸着し、漂ってきた獲物をひと飲みにしたりして暮らしているそうだ。
ぬるぬるして捕らえどころが無いので、キッチンバサミで捌いてみる。今回購入した個体は雌だったようで、大量の卵が2腹出てきた。卵と肝を取り、内臓とえらと頭部をのぞき、その他はぶつ切りにする。
身よりも卵のほうが多いとは驚き。
函館の漁港が紹介していた調理法で「ごっこ汁」にしてみる。
簡素なレシピがなんとも素敵。分量は全て適当。郷土料理なんてそんなもんなのだ。食べたことのない郷土料理を想像で作るってのも面白いではないか。
昆布だしにごっこの身と卵を入れ、しょうゆ酒みりんで味付けし、ごぼう、ねぎ、豆腐、しいたけ、えのきを入れて煮る。最後にあおさを入れて完成である。簡単。
ふるさと納税でゲットしたいくらの醤油漬けと一緒に食す。
ゴッコ汁はカサゴの仲間らしく良い出汁が出ており、身と皮はゼラチン質でプルプル、軟骨もほとんど気にならずに食べられる。アンコウ鍋に近い感じだが、アンコウの強烈な旨味というよりは比較的あっさりして淡白な味わいである。美味い。
卵は煮ても食感は失われずみっしりプチプチと不思議な食べごたえ。濃厚な魚卵の旨味を期待すると少し拍子抜けするが、軽い甘味とコクがあり悪くない。ただ、あまりに量が多過ぎた。半分は醤油漬けなどにしたほうが良かったかもしれない。抱卵している雌のほうが高値で売られているらしいが、プルプルのコラーゲンを鍋で楽しむなら雄の方が食べごたえがあって良いのかもしれない。
絶品!また来年も必ず食う!という感じでは無いが、素朴に美味い鍋であった。知らない魚にチャレンジできたし、満足である。
いくら丼を食ったので当日はシメまで行かず、翌日昼に雑炊にして食ったのだが、むしろこっちの方が美味かった。トロトロに煮込まれた身と野菜からしっかり旨味が出ており、思わず昼から純米酒を合わせてしまった。
ゴッコ汁、奥が深い。