ふらふらとネットの海をさまよっていたら、2010年代の映画を振り返り、個人的ベストテンを選出しようという企画を見つけた。僕も乗っかることにする。
ぼくは年間100本以上観るような熱狂的映画マニアでは全くなく、DVD等も含めて年間20〜30本くらいのごく軽い映画ファンである。浅いランキングかもしれないが、個人的に響いた作品を選んでみた。
10.セッション(2015年、デイミアン・チャゼル監督)
シーンと静まり返った映画館にタン、タン、タン、タンというスネアロールの音が響いたのを今もはっきりと思い出せる。
J・K・シモンズ演じる鬼教官の凄まじいパワハラに対し、はじめは純朴でおとなしかったドラマーの主人公が少しずつ自我を見つけるとともにおかしくなっていき、最後10分の狂気のセッションで一気に鳥肌が立つ。
ストーリーとしてもロジックとしても何も解決してないし、ハッピーエンドでもないのだが、最後の圧巻のパフォーマンスで強制的に納得させる監督の手腕が素晴らしい。このラストのパフォーマンスシーンが好きな人は、映画『ドラムライン』も是非観て欲しい。同じくラストシーンで鳥肌が立つ。
9.キングスマン(2014年、マシュー・ヴォーン監督)
正統派スパイ映画かと思いきや、かなりブラックなユーモアがてんこ盛り。主人公の成長譚、バディアクションムービーとしての面白さも詰め込んであり、エンタメとしてかなり楽しい作品である。
コンプラなんて糞食らえと言わんばかりにダンディなコリンファースおじさんが暴徒を殺しまくるアクションシーンや、ラストシーンの音楽と色の演出はバカバカしくて笑いが止まらなかった。悪趣味ではあるが嫌味ではないのが凄い。そしてやっぱり文句なしに格好いい。
8.ウルフ・オブ・ウォールストリート(2014年、マーティン・スコセッシ監督)
貯金ゼロから年収50億まで稼いだ伝説的な証券マンの自伝を元にした映画。ディカプリオ演じる主人公のクレイジーっぷりが凄い。欲とエネルギーしかない。半分犯罪まがいの手口とハッタリで大金を稼ぎ、クスリとオンナと権力にまみれる。そしてそれをあくまで明るく派手なエンターテイメントとして魅せている。3時間の上映時間があっという間。
何処かで聞いたが、放送禁止であるfuckの4文字を史上最多で使用している作品らしい。主人公が会社でぶち上げる演説シーン、胸を叩いて鼻歌を歌うシーンなどどれも非常に格好良い。観るとエネルギーが伝染する。
7.シェフ 三ツ星フードトラック始めました(2014年、ジョン・ファヴロー監督)
ここまでとは一転してすごく平和な映画。目立つ悪役も天才もアクションシーンも出てこない。そして誰も不幸にならない。トラブルを起こしてレストランをクビになったシェフがオンボロのフードトラックのオーナーとなり、トラックを転がして各地を巡りながら料理人として、父として再起していくロードムービー。
個人的に音楽と食べ物を扱った映画が凄く好きで、これまでに3回ほど鑑賞している。観るたびにハッピーな気持ちになれる良い作品。ピース。
特撮映画かと思いきや、現代日本を風刺するコメディ作品だったという問題作。登場人物の肩書きがエヴァンゲリオン風に次々に映し出され、数多くの役人や学者、官僚、政治家が登場しては右往左往するが、何も解決せずに被害は拡大していく。なんだこの作品は。
公開当初、内容がネタバレしないようにある種の情報統制がされており、はじめに観た誰しもが騙されたのではないだろうか。そして観た人は絶賛。そして何も言わずに人に勧めるという流れができていた。僕もその流れにリアルタイムで乗れて貴重な体験だった。
バカバカしいがこれがリアルなのかもと謎の説得力がある日本映画の傑作である。無人在来線爆弾!!!
5.グランド・ブダペスト・ホテル(2014年、ウェス・アンダーソン監督)
『ダージリン急行』や『ファンタスティックMr.フォックス』などで大好きになったウェス・アンダーソン監督作品。架空の国のホテルを舞台にしたドタバタコメディ。
左右対称をきっちりと意識した画面の作りこみや、独特の色使い、平行移動を多用した特徴的なカメラワーク、随所で出てくる急なミニチュアアニメーションに観ていてニヤニヤが止まらない。初めてこの作品を観てハマる人もいるだろうが、監督の前作をいくつか観た後だともっと楽しい。まさに独自の世界観である。なんとも大好きな作品。
4.カメラを止めるな(2018年、上田慎一郎監督)
自主制作の低予算映画だが、2018年に一大ムーブメントを巻き起こした作品。低予算のゾンビ映画ということしか情報が無く、イロモノ覚悟で見に行ったら超一流の娯楽映画でいい意味で裏切られた。後半は驚きと笑いと感動が嵐のように押し寄せてくる。
シン・ゴジラもそうだが、この映画をリアルタイムで観賞できて良かったと思う。何度も見返す映画ではないが、初見の楽しさのインパクトが素晴らしかったのでランクイン。
3.バーフバリ 王の凱旋(2017年、S・S・ラージャマウリ監督)
バーフバリ!バーフバリ!バーフバリ!バーフバリ!!!
バーフバリ!バーフバリ!バーフバリ!バーフバリ!!!
バーフバリ!バーフバリ!バーフバリ!バーフバリ!!!
バーフバリ!バーフバリ!バーフバリ!バーフバリ!!!
圧倒的なテンションの大スペクタクルが繰り広げられるインド映画の超大作。娯楽の全てがここにある。観ていて語彙がどんどん減っていきアドレナリンが湧き出てきて多幸感に包まれる。何だこの映画は。
伝説の王バーフバリのあまりの強さ、優しさ、勇敢さ、人徳にひれ伏したくなるぜ。最高である。
バーフバリ!バーフバリ!バーフバリ!バーフバリ!!!
バーフバリ!バーフバリ!バーフバリ!バーフバリ!!!
バーフバリ!バーフバリ!バーフバリ!バーフバリ!!!
バーフバリ!バーフバリ!バーフバリ!バーフバリ!!!
2.マッドマックス 怒りのデス・ロード(2015年、ジョージ・ミラー監督)
V8!V8!V8!V8!V8!V8!V8!!
V8!V8!V8!V8!V8!V8!V8!!
V8!V8!V8!V8!V8!V8!V8!!
V8!V8!V8!V8!V8!V8!V8!!
こちらも語彙がどんどん少なくなってくる不朽の名作。荒廃しきったヒャッハーな世界でヒャッハーな男達がヒャッハー!と馬鹿みたいな改造車を暴走させて超ド級のカーチェイスをやり続ける映画。
トゲトゲのついたクルマ、回転ノコギリを振り回すクルマ、飛び回るバイク達、ボスの威厳を表すためにキャデラックを縦に2つ積んだ頭の悪い改造車。白塗りのドライバーに爆弾のついた槍を持ち特攻してくるウォーボーイズ達。巨大なスピーカーを積んだトラックには火を噴くギターを持った赤い男がブラブラしており、そのトラックの背後ではドンドコと太鼓を叩く男達が並び、ギターと太鼓の爆音で戦隊を鼓舞し続ける。そんな馬鹿みたいなクルマ達とド派手なアクションを観ているとアドレナリンがジャバジャバ出てくる。なんて映画だ。もう何度見返した事やら。
そしてそのバカバカしい世界観、演出にもかかわらず、ドラマとしてはしっかりと作られており何度も飽きずに観れる物語の強さがある。
What a lovely day!!! イモーターーン!!!
さて、第1位はちょっと真面目に。この映画は日本映画史に残る名作だと思う。
この世界の片隅には普通の暮らしや普通の幸せがあり、その世界を戦争と原爆というものが理不尽に粉々にしていき、それでもその世界で生きていかなければいけないという事を、恐るべき完成度で描いている。
前半のほのぼのとした明るいタッチと、女優のんが声を演じる主人公すずさんのほんわかとしたキャラクターで、貧しい日々の暮らしをユーモラスに明るく乗り切る様がじわじわと滋味深く伝わってくる。しかし戦争と原爆がその生活を一変させ、大切なものをいくつも失った主人公すずさんは初めて感情を爆発させて慟哭する。今思い出しても泣きそうになってしまう。というか、映画館であれだけ号泣したのは初めてだ。
原作の漫画も最高なのだが、それを丁寧なタッチでアニメーションに仕上げており、そこに女優のんの素晴らしい演技が完璧に乗っている。
ビートたけしが東日本大震災の後に語っていたが、2万人が亡くなった大災害というものはなく、誰かのかけがえの無い1人が亡くなる事件が2万件起きたということなのだ。戦争だって、そこで生きていた1人1人の暮らしを奪う事件が同時多発的に数百万件起きたということなのだ。それを思い出した。
この作品は、定期的に観返して日々の暮らしのかけがえの無さと、それを無残に奪い去る戦争の残酷さを思い出すべき名作である。
以上!
2010年代の個人的ベストテンである。
上位の作品はどれも、その時代の空気感とともに映画館で観賞し、リアルタイムで発生していく作品への反響を感じられたことが実に幸せな体験だった。この時代に映画館で観て良かった!と心から思えた。
また、個人的に好きな映画の傾向がでてますね。
・独特の画づくり、世界観を持った作品が好き
・食や音楽を扱った作品が好き
・馬鹿馬鹿しいくらいに過剰な演出が好き
・日々の暮らしの大切さを描いた作品が好き
・人の愚かさも含めた魅力を群像劇として描いた作品が好き
また、悩みに悩んでランキング外となった映画は以下。
11.ジョーカー (2019年、トッド・フィリップス監督)
12.ソーシャル・ネットワーク(2011年、デヴィッド・フィンチャー監督)
13.クロニクル(2012年、ジョシュ・トランク監督)
14.ボヘミアン・ラプソディ(2018年、ブライアン・シンガー監督)
15.ベイマックス(2015年、ドン・ホール , クリス・ウィリアムズ)
時間があったら、個人的なオールタイムベストテンもやろうかな。ではでは。